理事長挨拶


日本人間性心理学会第14期理事長 金子周平(九州大学)

 第13期に引き続き第14期も理事長を務めることになりました。改めて気の引き締まる思いで今期を迎えております。今期は新理事を8名迎え、委員会体制も総会を経て研修委員会、研究・倫理委員会がリニューアル・新設される予定です。時代に合わせて柔軟に学会運営を行っていきつつ、これまでと変わらずに学術的な活動や交流の場を提供し続けてまいります。学会員の皆様が、それぞれに人間性心理学を探究し、学術的な仲間づくりを行い、そして自由にチャレンジをしていく機会として、学会の様々な活動をご活用ください。

 第13期最後の第40回記念大会は、本学会の40回目の大会であったわけですが、学会の設立日自体は1982年 7 月11日ですので、第14期のスタートがちょうど区切りの時期でもあります。もう少し視野を拡げますとアメリカのAssociation for HumanisticPsychologyの発足が1961から63年にかけてですので、ヒューマニスティック心理学の誕生からおよそ60年ともいえます。一括りにはできませんが、第14期の理事はMaslowやAllport、Rogers、Rollo May、Bugentalらの孫世代といってもいいかもしれません。

 第40回大会では名誉会員のお話から「知の伝承」というビデオ作成を企画し、第41回大会では「回帰、そして飛翔」を大会テーマとしました。第14期も理事一丸となってその流れを汲み、人間性心理学会の歴史にしっかりと立ち戻りつつ、これからの40年、60年に向かって方向を定めて歩き出す時にしたいと思っています。奇しくも現代社会は大きな変動の時です。COVID-19、そして戦争という世界的な脅威にさらされています。歴史を振り返りますと、ヒューマニスティック心理学の誕生と、第二次世界大戦が人の心にもたらした影響、ヨーロッパからアメリカへの心理学者の亡命などは明らかに関係しています。ベトナム戦争と人間性回復運動の隆盛ももちろん無関係ではありません。人類はいま、二世代ほど前の戦争の歴史をも忘れてしまっていることの恐ろしさに直面しています。人間性心理学がその歩みを振り返り、現代社会の大きな流れの中でいかに身を投じるのか、皆様と一緒に目撃し、行動したいと思います。

 人間性心理学とは何かを語る際によく引用されるBugentalの言葉の中から、私が特に気に入っている二つの文を引用してご挨拶を締めくくりたいと思います。“Human beings have some choice and, with that, responsibility.” “Human beings are intentional, aim at goals, are aware that they cause future events, and seek meaning, value and creativity.”(人間は選択をすることができ、それゆえ、責任を伴う存在である。人間は意識的な存在で、目標を志向し、未来の出来事を生じさせることに自覚的であり、意味、価値、創造性を探求する。)

 これからの 3 年間、皆様が人間性心理学に触れ、学び、発展させていけるように学会運営を行なって参りますので、何卒ご参画とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。